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彫刻家・遠野公彦。独身、四十二歳。頭髪と体型に少々の難あれど、相続資産あり。そんな遠野に巡ってきた、千載一遇のモテモテチャンス。
だが、ひょんなミスをしたことが運の尽き。艱難辛苦、抱腹絶倒、めくるめく夜の迷走劇がはじまった ──。(表題作『蜘蛛の糸』)
深慮遠謀が見事に空振りする、しょうもなさ天井知らずの男たちを濃厚に描いた全七編。
人間の本質を独特の視線で描いたミステリーで絶大なる支持を得る黒川博行。彼の魅力が濃縮された爆笑短編集。
女の前で条件反射的にええかっこをしてしまう男たちのあほらしさ、むなしさ、そして脳天気さを、抉って晒して笑いのめす。
これはまさに、上方落語の世界。
騒いでいるだけの笑い、仲間内の笑いに飽きた、目の肥えた大人に読んでもらいたい一冊。 |